最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)793号 判決 1950年8月09日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人工藤昭弁護人高梨光上告趣意第一点について。
所論(1)の共謀の事実並びに牙保行為は原判決挙示の証拠によって優に認定できるのである。又牙保は賍物の処分行為の媒介周旋をすれば足り、そのため利益を伴うことを要するものではない。されば所論は事実誤認の主張と牙保行為に対する独自の見解を主張するものであって論旨は理由がない。
所論(2)はこれ又原判決認定の事実はその挙示証拠によって明らかに認めることができるから、事実誤認の主張であって上告適法の理由とならない。尚、証人三島幸徳の原審供述中には所論指摘のような供述(当夜は暗かったので吉田工藤の二人がその内にいたかどうかはっきりしないとの点)はあるけれども、本件強盗行為につき被告人工藤が共犯の一人であった事実は原審挙示証拠中の原審相被告人吉田政教第一審相被告人村瀬章並びに被告人工藤の自供によって明らかなところであるから、原判決には採証上についても何等の違法はない。
同第二点について。
所論は量刑不当論であるから上告適法の理由とならない。
被告人工藤昭提出の上告趣意について。
右は原判決認定の事実には間違ったところがあること、且つ寛大な処分を願うと云うのであって、かかる事由は刑訴応急措置法第一三条第二項により、当裁判所に対する適法な上告理由とならないからこれを取り上げるわけにはゆかない。
被告人石丸時頼弁護人栗原良哉上告趣意第一点について。
所論指摘の供述調書を見ても、その供述が強制によったものである等とは到底認められない。所論は結局原審の証拠判断に対する非難に過ぎないから上告適法の理由とならない。
同第二点について。
賍物知情のような犯罪の主観的要件たる事項については、被告人の自供以外に直接の補強証拠を必要としないことは、当裁判所屡次の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一八五一号同二四年四月七日第一小法廷判決判例集三巻四号四八九頁、昭和二三年(れ)第七七号同二四年五月一八日大法廷判決判例集三巻六号七三四頁、各参照)。それ故論旨は理由がない。
仍って、刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決する。
この判決は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)